チャンピラ日記(仮)

電気も水道も無い場所でコハル(犬)と暮らすコミュニティ開発隊員の日常

初めて人をクビにした日

遡ること3か月ほど前。

 

ある日、村をふらついてたら

「アリサ!」の声。

土日担当のウォッチマンでした。

マラウイ隊員は、安全対策の一つとして「ウォッチマン」と呼ばれる警備員を夜間雇うことができる。

「ガードマン」ではなく、本当に「ウォッチマン」

見てるだけ。侵入者への抑止力。たぶん夜中は寝てる。てか昨日見たら寝てた。

うちのウォッチマンは、水汲みや洗濯、庭の掃き掃除もしてくれる働き者のおじさん。

夜中寝てるけど。

 

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服装だけは頼もしいガードマン。右手に持っているのは短剣

 

 

ばいばいデイビッド

この土日ウォッチマンことデイビッド、契約満了を待たずにクビにしました。

 

とある土曜日:1時間の無断遅刻

翌日:30分の無断遅刻

まぁ…これだけなら許容範囲。むしろ1時間の遅刻で来るなんて優等生。

私、最高で6時間待たされたことある。連絡なしで。ウォッチマンじゃなくて同僚だけど。

 

私は、ウォッチマンの遅刻云々についてはあまり厳しく言わないことにしています。

15分までは無断遅刻しても減給無し。それ以上遅れる場合は連絡するように、と。

携帯持っていない人もいるし、電話代チャージしていない場合も多いし、

何より電波が悪い地域が多い(少し外れると2Gしか入らない)ので、

まぁ連絡なくても仕方ないかなぁとは思うけど(いやそもそも遅れるなって話)

15分までは目をつぶっていました。

 

ただ、デイビッドについては遅刻が多すぎる。

あと、たぶん酔ってるんだろうなぁっていう謎行動が多すぎた。

これ燃やしといてって言って渡したゴミをコハルに食べさせようとしたり。

 

土日連日の無断遅刻、しかも指摘したらbut I came!!!!!と逆ギレされたこともあり

3枚発行するとクビにできるイエローカード的なもの、

warning letterを2枚手渡しました。

 

そして連日無断遅刻の翌週。

土曜:1時間前に来てやる気を見せる(私とっても感動してめちゃくちゃ褒めた)

日曜:来ない

 

そう、ついに無断で来なくなった。何度電話しても来ない。

ようやく繋がったと思ったら、英語しゃべれない奥さんが出て、どうやら

「夫は仕事に行ったよ!」と言っている様子。

仕事?仕事場うちだよね?来てないけど…?

 

結局その日は現れず、翌日。

デイビッドを紹介してくれた配属先所長(当時:Lさん)にこの話をし、

奥さんに電話してもらった。

 

月曜9:00

所長「デイビッドは?!」

奥さん「まだ仕事から戻ってないよ!」

所長「昨日出勤してないぞ!無断で休んでる!」

 

奥さん「は?!」

 

デイビッド、まさかの行方不明。

仕事に行ったのに、仕事場にたどり着いていない。

途中で何かあったんじゃ…。

とりあえず、奥さんが探してみるというので一旦待機。

 

午後、所長が再度奥さんに電話したところ、デイビッド発見の一報があった。

所長「あいつは今すぐクビにしろ」

私「え、事故とかじゃなかったの?なんで来なかったの?」

所長「売春婦のところにいたらしい…」

その場にいた全員唖然。

無断欠勤して夜遊び。奥さんブチギレだそう。

 

もうこりゃダメだということで、後日3枚目のwarning letterを発行し、解雇しました。

 

 

そして冒頭。

 

無断欠勤事件の翌日か2日後だったかな。

デイビッド「アリサ!!!」

こんなところ(交番の前)で何やってんの?と聞いたところ、

「out drom police...かくかくしかじかkunyumba...ぺらぺら」

無断遅刻するな!!!!と怒ると、「Thank you」と返してくる

デイビッドの英語力と、私のポンコツトゥンブカ語力を総動員させると

どうやらこういうことらしい。

 

先日の件で奥さん切れた。家が大問題。俺は今日まで警察にいた。

奥さんやばい。こわい。超キレてる。これから帰る。どうしよう。こわい。

 

そんなん知らん、自己責任でしょと言いたいのをこらえて

ペパーニ(I'm sorry)とだけ言って帰宅。

 

それから少し時が過ぎて。

パン屋(売っているパンは食パンのみ)で、デイビッドの奥さん

その取り巻きみたいなおばちゃんたちに遭遇。

一応挨拶すると、なんかわめき始めた。たぶんだけど、

「こいつが私の夫をクビにした!!!」みたいなこと。

 

いや、私まっっっっったく悪くなくない?

恨むなら仕事サボって夜遊びした夫を恨め!

と心の中で叫んで笑顔でパン屋を後にした。

だって私はもめ事を避けたがる日本人。

 

そして先日。

WFP*1の付き添いでとある村に行ったとき、デイビッドがいた。

気まずすぎて気づかないフリをしたけれど、一人だけ外国人の私に

あちらが気づかないわけがない。

 

や、やぁ。元気?

 

元気だよ!あ、これうちの子供たちと奥さん

 

 

・・・・・・・・・・え?

 

道端で会ったときに「私はデイビッドの妻です!」と挨拶してきた

パン屋で私にグチグチわめいていた

 

あ の お ば さ ん じ ゃ な い ・・・?

 

デイビッドが紹介してくれたのは、若くて可愛い女性。

夫をクビにした私に昼食を出してくれた優しい女性。ポイズン入ってなくてよかった

これまでデイビッドの奥さんだと思っていた、あのおばさん婦人じゃなかった。

 

あのおばさんは誰だったのだろう… 

 

ウォッチマンの賃金事情

マラウイ最低賃金は、都市も地方も同じ。

一律962クワチャ/日(≒150円*2

www.nyasatimes.com

一日の労働時間が8時間なので、時給換算すると120.25クワチャ/時間。

ただ、本当にみんなちゃんとこの金額もらえているのか…というと、

インフォーマルセクターの労働者はそうではないと思う。

で、私が住むチャンピラには、インフォーマルセクター従事者が多い…気がする。

 

そんな中、JICAボランティアのウォッチマンの給料は、1,690クワチャ/日。

労働時間は12時間だけど、

玄関前で雇い主の炭使って暖まりながらシマ食べているだけ目を光らせているだけで

フォーマルセクター給料の1.7倍もらえる。

 

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特に深い話をしたかったわけではありません。

そんなおいしい仕事を捨ててまで会いたかった売春婦って

どんな人なんだろう

っていうのがすごい気になる

 

*1:世界食糧計画:国連の多国間食糧援助機関

*2:2018年9月14日現在