✖出る杭は打たれる
後日談↓
vivir-mi-vida-malawi.hatenablog.com
こういうことは書くべきではないかもしれないけど。
先週の水曜日。
毎週9時からミーティングがあった気がする…と10時頃職場へ。
案の定、人が全然集まっておらず、しばらく待機してからミーティングが始まった。
開始直後、ぼけーっとスマホをいじる私。
隣に座っていた同僚に名前を呼ばれ、周りを見渡すと全員起立してる。
あれ?何?ごめん、いつもと違う流れなの??
よく分からないまま立ち上がった私に、同僚が言った。
「前所長が亡くなったから冥福を祈るんだ」
え、この人なに言ってんの?
って本気で思った。だってこの前までピンピンしてたじゃんって。
配属先の前所長(Lさん)は、
Fine and Goooood!!!!!
が口癖の陽気なおじさん。チャンピラに来て何もせずぼーっとしている私のことを
my sisterだ!と言っていつも気にかけてくれた。
たぶん40代半ばだと思うんだけど、首都の大学を先日卒業したばかり。
新しいことを覚えること、自分の知識や技術を増やすことにとても貪欲で、
自分はパソコンの使い方を知らないけど、ありさは知っている。
使い方や知識は身に着ければ一生自分の財産になる。
と言って、10歳以上も年下の私に「時間を作って教えてほしい」と頼んできた。
gmailの使い方、グラフの作り方、Wordでのレポート作成の仕方、
ファイルの移動の仕方…など。説明を全部メモして一生懸命練習してた。
6月の下旬だったかな。
彼の昇進が決まった。異動先は、県の農業事務所。
チャンピラからは車で1時間ほどの場所。
家族で住む家がなかなか見つからないようで、平日は農業事務所付近に一人で滞在し、
土日は家族の住むチャンピラに帰ってきていた。
土日のたびにLさんの家まで挨拶しに行き、パソコン操作を教えたり子供たちと遊んだりしていた。
7月下旬に引っ越す予定が延期になり、8月上旬になりそうだと聞いた。
自分たちが引っ越してから後任が着任する、ということも。
7月下旬から8月上旬にかけての国内旅行からチャンピラに戻った日、
メッセンジャー(配属先の何でも屋さんみたいな人)が、
引っ越しは火曜日だよ!!!会いに来てね!!
と書かれたLさんからの手紙を持ってきてくれた。その日の午後、
火曜日ちゃんと見送りに来てね!
とわざわざLさんが言いにきた。
これが、私がLさんを見た最後の日だった。
火曜日。
いよいよ引っ越しだねと奥さんに言うと、
引っ越しはまだまだよ~
と言われた。マラウイでは、予定が予定通りに進むほうが珍しい。
それから何度かLさん家族に会いに行き、2週間ほど経った日のこと。
新しい所長が正式着任した。Lさん家族はいつの間にか引っ越していた。
そんなに遠い場所に引っ越したわけでもないし、そのうち会いに行けば良いやー
って思っていた。
2週間前、用事があり県の農業事務所の近くまで行った。
その日は土曜日で、Lさんはいないだろうから来週あたり平日に会いに来よう
と思い立ち寄らなかった。
そして先週、突然の訃報。
ミーティングの日の朝、亡くなったとのこと。
事故でもマラリアでもなく、突然死だと。
とある病気が原因かも、なんて聞いたけど、信じられなかった。
と言いながらバイクぶっ飛ばしてフィールドに行ってしまうLさんが亡くなったなんて
信じられなかった。
その日の夜。
ウォッチマンと、Lさんの訃報についての話になった。
やっぱりとある病気が原因らしい、と言う彼が、
実はこんな噂があるんだ、僕は信じていないけどね、と付け加えた。
「Lさんは首都の大学に行って勉強していたから、村人から妬まれていた。
大学に行けば収入は増えるからね。
マラウイでは、高等教育を受けるのはとても大変なこと。
教育を受ければ収入も増えるけれど、そもそも教育を受けるための収入が無い。
だから、大学を卒業した彼を妬んでいる人たちが、
黒魔術をかけたかポイズンを盛って殺したのではないか、と言われている。」
衝撃を受けた。
マラウイでは、黒魔術や魔女の存在を信じているが多い。
今回亡くなったLさんにも、「あいつは黒魔術をかけるから近づくな」と言われたことがあるし、
他の同僚からは「魔除け効果があるから犬は飼っていたほうが良い」
と言われたこともある。
前に近くの村に住む人が亡くなったときは、「あいつはお酒を飲むから呪われて死んだんだ」って聞いた。(そんなこと聞いたらこわくてお酒飲めない)
そして、マラウイアンは人より抜きんでること、目立つことを異常に恐れる。
都市部ではそうでもないのかもしれないけれど、少なくとも私が知っている人はそう。
「コハル(犬)が日本人に飼われているから、嫉妬されて
ポイズンを盛られる可能性がある。敷地外に出すときは目を離さないほうが良い」
と言われたり、
「日本人といるだけで妬まれる」と言われたこともある。
自分の生活状況を隠す人も多い。
その人自身や家族の見た目はボロボロ、お金がないとアピールしているのに、
実は家に液晶テレビとプロジェクターがあります、
実はソーラーパネルとジェネレーター2台、DVDプレイヤー持っています、なんて人もいる。
※ちなみに、「ポイズン盛られて死にました」系の話は何度か聞いたことがある
日本では「出る杭は叩かれる」と言うけれど、
ここでは「出る杭は呪い殺される」
そりゃ目立ちたくないよね。
これがマラウイの発展(発展の定義はここでは置いといて)の妨げの1つなのかもしれない。
高等教育を受けたり、お金を増やそうと頑張ると、
周囲から嫉妬されてポイズン盛られたり黒魔術かけられるって思っている。
例えば、マーケットでの話。
私が住む村から6キロほど離れた町に比較的大きなマーケットがある。
そこで売っているもの、みんな同じ。
ある一角では全員がトマトを売っており、また別の一角では全員が玉ねぎを売っている。
みんな同じものを売っているから、値段が違うのかと思いきやみんな同じ。
値下げするときはみんなで一緒に値下げする。
自分だけが儲けて抜きんでることを恐れているのかもしれない。
彼らの思想や信条を否定する気はないけど。。。
目立つこと、飛び出ることを恐れていたら何も変わらないんじゃないかなって思ってしまう。
Lさんのご冥福をお祈り申し上げます。
※個人の経験と見解です。すべてのマラウイアンがそうだというわけではありません
※Lさんの名誉に関わることなので、名前は頭文字だけにしました。